『──はい』

「あ、大輔?」

『おう、翔真。もしかして、部の連絡網か?』

「ん、試合中止だって。練習も無し」

『はぁ……やっぱこの土砂降りじゃなぁ……』

「まぁそんな落ち込みなさんな。次があるし」

『次はって……お前、次はスタメン選ばれねぇかもよ?』

「うるせぇ。次も絶対選ばれてみせるし」


大輔の笑い声がケータイ越しに届いた。
つられるように俺も笑った。


結局試合は中止。
雨は昨日より酷くなっていて、朝っぱらからバケツをひっくり返したような状態が続いている。


悔しいけど、思ったほどじゃない。

どうやら俺のやる気や闘志も、雨に流されてしまったようだ。


『大丈夫か?』

「ん?」

『……中村』


大輔の放った一言で、軽い空気が一気に変わった。


朝にも関わらず薄暗い部屋には、相変わらず重苦しい雨音だけが響いている。


俺はベッドに座ったまま冷たい壁に背中を預け、目を瞑った。


「……いや。電話にも出ないし、メールも返信ない。」

『は?マジかよ……。家には行ったか?』