「あたくし、バス停の屋根つきベンチに座ってたザマス。ダチとギュウギュウ詰めだったザマス」

「うん」

「で、うっかり自分の傘倒しちゃったザマス」

「アホだな」

「そん時ちょうどバスが来てて……って、それはあたくしが乗るバスじゃなかったんザマスけど」

「うん」

「そのバスに乗ろうとした、中村……さん、が。あたくしの前を通り過ぎる時に、傘を拾ってくれたザマス」

「で?惚れちゃったと?」

「…………」

「…………」

「……いい加減、この口調やめてもいいッスか?」


俺の周りを取り囲んでる男共が、機関銃のように笑い出した。
今まで堪えていたものを腹の底から吐き出すように。

笑い過ぎてゴホゴホむせている奴までいる。


「翔真(ショウマ)、話逸らすなよ。肝心なとこ言えてねぇじゃん」


ゲンナリとする俺に、悪魔のような笑みで容赦ない要求を突き付けるのは、大富豪・大輔。
大富豪と言ってもゲームの中の話だけど。


昼休み恒例の大富豪でまんまと大貧民になっちまった俺は、只今罰ゲームの真っ最中。

内容は、『金持ちのおば様口調で恋バナ暴露』。

どうせなら貧民らしく、普通に暴露させてほしい……。


「もう勘弁して……」

「大貧民がつべこべ言うな。ほら、続き!」

「……このハゲ」

「あ゙ぁん!?」


高1にしてはガタイのいいハゲ……じゃない、坊主頭の大輔。

そんな奴に鼻がぶつかりそうな程の至近距離でガンつけられ、真剣に命の危険を感じた俺は、渋々口を開いた。