「あっ、お、俺さ!次の試合スタメンに選ばれたんだ」


苦し紛れにこんな話をする予定じゃなかったのにな……と心の中で落ち込みつつ、これしか話題が思いつかなかった。


今日の筋トレ後、監督の話でスタメン発表があった。

サッカーが特別上手いわけでもなく、今まで試合の途中にひょっこり出してもらえる程度だった俺は、特に期待もしてなかった(いや、やっぱちょっとは期待してたけど……)。

で、まさかのスタメン。

大輔も喜んで声かけてくれたけど俺は一刻も早く、中村に報告したくてしたくて……上の空だった、と思う。すまん大輔。


「へぇ……」と中村は少し目を見開きそう呟いた後、綿飴のような優しい微笑みを浮かべた。


「よかったね」


たった一言。

だけど、温かいものが俺を満たしていく。


多分こんな中村の優しさは電話やメールじゃわかんないだろうな、ぼんやりとそんな事を思った。

同時に、こんなに近くで中村が微笑んでる事も夢のように思えてくる。


「……どうしたの?」

「んえ!?あ、いや……」