しかもオレの名前を覚えてくれていた。

なんか、ヤバイな……。


「大丈夫!大輔いるし。俺らが2人で1つの傘を……って、なんかそれキモイな……」


俺と大輔が相合傘をして密着したまま下校する風景を想像する。

キ、キモイ……。


真剣にドン引きしていると、雨音に混じって笑い声が聞こえた。


……中村が、笑っていた。

微笑むんじゃなくて、声に出して笑っていた。


ポカーン……。


「傘、大きくないと足りないね」


そんな言葉に、中村も俺と同じ想像をしていたんだと気づく。

そして中村は笑ってる。

ニコニコしてる。中村が。


……なんで。

なんで、こんなに嬉しくなるんだろ……。


「なんとかなるさ。だからこれ使って」

「……ありがとう」


中村は微笑み、傘を受け取った。


中村って、こんなに笑う奴だったっけ?
こんなに喋る奴だったっけ?


同じクラスなのに、中村の事を何も知らない自分に心底呆れた。

だけど、なんだかニヤけてしまう。

中村がほんのちょっとだけ、心を開いてくれたみたいで。