ぱたん・・

ドアが閉まった。

父が部屋から出て行った・・・

その瞬間目からは一生分の涙と言っていいほどの涙があふれだした。

・・・誰よりも泣いていた。




そして数分すると父は戻ってきた

「どこ、行ってたの?」

聞きたくなかった。
話したくもなかった。

「母さんに、連絡した。」


頭の中が真っ白。
・・・母さんって、あたしの母さんでしょ?

なんて・・・?


「急いでこなくて、いいぞって。
事故ったら大変だろ」


・・・・・・・・なんで?
なんで、ソンなこと・・・


「な、んで?」


嘘でもいいから、「早く来い」って言ってよ
嘘でもいいから、「俺たちは間に合った」って・・・

嘘でもいい、だから
どうか、優しい嘘をついて。

―知ってたよ。
母さんのことだから、講習会抜け出してきっと来るって。

―知ってたよ。
きっとつるつるの路面だろうとおかまいなしにスピードだすって。


でも、・・・・
死に目に会えないってのは、あたしでさえこんなに辛いのに・・・
母さんは、耐えられないかもしれない。
だから、


せめて、優しい嘘を。
せめて、偽りの事実を。

それをあなたに望んだあたしがバカでした。