父が大嫌いなあたしはそんな冷静さが大嫌いだった。
あたしはなんとなくわかってた。

じいちゃん、今度はダメ
もう、奇跡は起きない。


もう、ダメ。

だから急いで!!
逢いたい、最期くらい、素直になりたい、謝らせて!!

でも、大嫌いな父の目の前で涙を流すワケにはいかず、そんな言葉はあたしの握りしめた手のひらに潰された。

手のひらからは血が出ていた。
泣きじゃくる妹にティッシュをとるふりをし、自分の手の血をふいた。

爪が食い込んで血がどくどくとにじむ。


・・・ああ、生きてるってこういうコト・・・

病院へつくと妹をさしおいて、靴もはかずに外へ飛び出した。
あたしのイヤな予感は、いつも当たってしまう。


いつも。
いつも。


凍った地面。
冷たい足、
氷で切って血が出ていた。

なれた病院
階段の数も、壁のヒビも、全部見慣れた

急いだ。
あたしにできる精一杯の速さ。


集中治療室へと移っていたじいちゃん


廊下には、たくさんの器具・・・


「・・・じい、ちゃ・・・」

あたしは立ち止まる。
ドアを開ける勇気がでない。

開けろ、開けろ・・

あたしの首には冷や汗が落ちた


「・・・ここを開ければ・・・っ」