それからしばらくして、夏が終わり
秋になろうとしていた・・・

じいちゃんは、ぼけが出てきて
あたしを母さんと間違えたり、
毎日病院にお見舞いに行く母さんに
「2週間ぶりだな」
と言ったり・・・

ご飯ものどを通らないし、足がつったように張ったり、
意識が1ヶ月以上も戻らない日もあった。


あたしは、そのとき初めてじいちゃんがやばい状況だと知った。

部活を休みお見舞いに行った。
そのときは意識がなくて・・・

「じいちゃん!」

「侑唯・・・」


「ねえ、ゆいだよ!!、起きて!
ねえ、じいちゃん!!」

なんど呼んでも、叫んでも、泣いても、喚いても
目を覚まさないじいちゃんにハラが立った。

そしてあたしは無理矢理じいちゃんの目を開いた

「じいちゃん、見える!?ゆいだよ!!
聞こえてる!ねえ、起きて!!
こないだの試合でね、24点も決めたの!!」

涙をボロボロとこぼしながら、あたしはじいちゃんの目を
何度も
何度も何度も
こじあけた。

そんなあたしを看護師も、母さんも何人も束になって止めた

「侑唯!!止めなさい!!」

「止めて下さい!!」


「離せ!!触るな!!
ね、じいちゃん、起きろよ!!!
起きろぉ!!!!!」


無謀だって、わかってる。
でも、あたしは後悔してるんだ。
車椅子のじいちゃんを、置いて買い物に行ったこと。
車椅子、押すの面倒だったし、まわりの目もイヤだった。

「じいちゃんが行くなら、ゆい行かない。」

そんな酷いコトを目の前で言ってしまったこと。

あのときのあたしは、あたし自身でも止めようがないくらいにむかついて、何かに反抗したくて・・・まわりはみんな敵・・・


そう、あんなに優しいじいちゃんでさえ
「面倒」で「うざい」存在だった。

あたしが「生きて」欲しくて・・・

なのに

「はやく死ね」と本一瞬でも思ってしまった。


そんなあたしにじいちゃんは

「ごめんなぁ、ゆい、ごめんなぁ・・・」

小さな声で、泣きながらそう言った。