「んじゃ、俺はそろそろ戻るけど?お前は?」
「ん…」
冬の澄んだ空に、白い息だけが生き物のように上がっていく。
「…もう少ししたら行く」
じゃあなっと帰っていく恭を俺は呼び止めた。
「恭!ありがとな。あと、これも!」
ふわっと投げたマフラーは、だらんとだらしなく恭の腕に絡みついた。
「いーよ。貸してやるのに…」
「ばーか。受験生に風邪ひかせるわけにはいかないからな」
さっきまで借りてたくせに…なんてブツブツ言いながらも憎たらしい笑顔で手を振って行く恭。
「ありがとな!頑張れよ受験生~!!」
空を見上げれば、昼間の白い月が浮かんでいた。