「泰輔はよく泣く子だった。
11ヶ月前に産まれたばかりのお姉ちゃんは、それほど泣く子ではなく育児の苦労はあまりなかった
だから、泰輔の泣きようにはお父さんもお母さんも驚いた。
一葉はにこんなにいい子なのに、なぜ泰輔はこんなに泣くの?
一葉はこんなに笑ってくれるのに、なぜ泰輔は笑ってくれないの?
その時の自分は、泰輔の全てを一葉や他の赤ちゃんと比べていた。
泰輔も笑ったり自分達を求めていたのに
いつの間にか泣く泰輔を見てると自分がおかしくなっていく気がした。
耳に入ってくる泰輔の声にイライラするようになっていった。
耳を塞ぐようになっていった。
この子は自分が嫌いなんだと
そう思うようになっていった」