もうすでに走っても意味が無いほど、髪も服もずぶ濡れだったけれど
それでも走り続けた。
「さっきまで花火が上がってたのにね!」
「花火の衝撃で、雨雲でも出来たんじゃないの?」
それぞれがこの雨を迷惑そうに、けれど少し楽しそうに話していた。
あたしは、一歩前を走る泰ちゃんを見つめる。
よかった、雨が降ってくれて
雨と一緒に頬に流れたものを、誰にも気づかれないように静かに拭った。
「…37度8分。風邪ね」
次の日
頭がふわふわして、どうも力が出ないと思っていたら
あたしは熱を出してしまっていた。
「昨日、雨の中帰ってきたから風邪引いたのね。まぁ、これくらいなら寝てれば治るわ」