バケツの水をひっくり返したような雨、というのは
まさにこのことだと思った。
みんなが一斉に声を上げて走っていく。
さっきまであんなに大勢の人が居たのに、まるでマジックのように誰もいなくなってしまった。
「…蜜葉?」
何度、呼ばれていたんだろう
ぼうっと立っているあたしを、少し先にいる泰ちゃんが見ていた。
きっと、後ろを着いてきていると思って振り返ったらいなかったんだろう。
その顔は、驚きと心配が入り混じっていた。
「あ、ごめ…」
「蜜葉!何やってんだ!」
泰ちゃんのさらに先を行く恭の声が聞こえた。
その隣には、日和が不思議そうにこちらを見つめている。
「ご、ごめん!驚いてボーっとしちゃった!」
あたしは3人を追いかけるように走った。