慌てて2人の方に駆け寄ろうとするけど、人が多くて近寄れない。
ちょっとくらい通してくれたっていいじゃない…っ!
なんて自分勝手なこと言ったって、通してくれる訳もなく
人と人の間に手を入れてかき分けようとした、その時
「えっ、…うわっ!!」
伸ばした手が誰かに掴まれ、思いっきり引っ張られる。
その勢いで人の間は抜け出せたけれど、体制が戻せずに転びそうになった。
「わわ…っ!」
掴んだ手はそのまま、もう一本の手はあたしの腰にやって体で支えてくれている。
端から見ればきっと、抱きしめられてるように見えるだろう。
「た、たたたた泰ちゃ…!」
支えられた時の香りと感覚で、すぐに泰ちゃんだってわかった。
横目に日和の少し赤くなった顔が見える。