「ここ、切り傷が出来てる。 俺を貫通した弾丸が、かすったのか」
そこは少し血が流れているだけで、大した怪我ではなかった。
自分の傷の方がひどいくせに、 彼は自分の心配をしない。
『そんなこと、どうでもいい・・・! お前が僕を庇って得することなんか ないのに、なんで!!』
死ぬ覚悟は、出来ていた。
なのに 関係のない盗み屋が、自らの命の危険を冒してまで、 自分を庇ったことに ルゥは納得できなかった。
「あれ、仮面を外しても “僕” って言うわけ? 女の子なんだからさ、顔を隠していない時ぐらい 僕っていうのやめたらいいのに」
『・・・・・・』
明らかに彼女を茶化しているシークに、 ルゥは次第に苛立ちを覚える。
まだ仕事は終わっていない。
取り返した資料を ユウリさんに渡したら、ようやく仕事は終わるのだ。
それまでは、 いくら仮面が外れようが “あたし” とは言わない。
女だからと、なめられるのが 嫌だからだ。