こんなに愛しているのに許されない。でもそれでも良い。
薔薇を育てたいと思った時、思ったことがあった。
私は彼の心に住むことが出来たから、それでもう満足だ。だからその想いの分だけ幸せを誰かにあげようと思った。
この想いの全てを伝える術がなくて。だから形として表せるようにした。
「自慢したい……」
ぽつりと漏れた自分の本音。
それに気付いてハッとした。
「レーア様……」
思わず口元を覆ったけど無意味のようだ。
「本当は…、自慢したいわ。私の好きになった人はこんなに素敵な人なんだって…」
でもこの世界で認められないのは自分。我慢するしかない。
すると女中たちは微笑んだ。
「何を言っていらっしゃるんですの。レーア様にはお二つの顔があるのですから、それを活用したらよろしいのですわ」
「活用…?」
「そうですわ。昼の姿はセヘネ様ともお親しいのですから無理でしょうけれど、夜の姿なら大丈夫でしょう?」
夜の姿……。
夜の私。
「夜なら“レーア様”で堂々とルゼル様の近くにいられるではございませんか」
セヘネの前では夜の姿でいるときが“レーア”だから、確かにそうかもしれない。
でも。
「セヘネ様に対して罪悪感があるなら、それは偽善ですよ、レーア様」
言われた言葉に思わず息を詰めた。
そう、普段から慕ってくれているセヘネを騙しているのだから、今更持つ罪悪感は偽善にしかならない。
「でしたら、堂々としていらっしゃったほうがレーア様らしいですわ」
にっこり笑う女中たちにレリアは口元を緩めた。
「そう…ですね」
ルゼルと出会って傷付かない人がいないことは知っていたのだから。
それでも愛してしまったから、後悔するのは筋違いなことなのだ。