笑っているところは本当に女神のように柔らかくて、まるで綿菓子のように見えるほど無邪気だ。
けれど甘いだけじゃない。ちゃんと強さも重ね備えた彼女は、人の想像する天使と同じように見えるかもしれない。
「クーが使用許可を取ってくれた森の中の拓けたところがあるでしょう?あそこで栽培していた薔薇なの」
「そんな話聞いたことなかったけど。育ててたならなんで切っちゃうの?」
「ふふ、それは後でのお楽しみ」
ルゼルの唇にちょんと指先で触れ、レリアはソファに移動する。その横に座ったルゼルはレリアの頭を引き寄せた。
「僕には言えないこと?」
耳元で囁かれて、レリアはくすぐったそうに笑う。でも一筋縄では答えないのがレリアだ。
レリアには秘密が多い。それこそ疑問に思うことはたくさんありすぎて、指で勘定できるかどうか不思議なくらい。それが愛情表現なのか、隠さなければいけないほどの秘密なのかは分からない。
「昨日したかった用事ってこのこと?」
「そうよ。枯れる前に摘みたかったから」
フワリと目の前で彼女が微笑む。
普段するレリアの匂いに混じって薔薇の匂いが鼻を刺した。
「薔薇の匂いが凄いなぁ…」
いつもの匂いが薄くて寂しい。本当に近くに寄らないと分からないくらいだ。
綺麗な金色の瞳が細められる。
「嫌い?」
「僕は普段のレーアの匂いのが好き」
細い首筋に顔を埋めると本来の匂いが鼻腔をくすぐる。
何となく瞼がトロンとしてきた。
「眠い……」
「もう、どうしてそうなるの。昨日ちゃんと寝たの?」
「寝た…と思う」
本当はいつもあるぬくもりがなくて、その物足りなさに朝方まで寝返りをうち続けていたのだが。
本人にそれを言うのは恥ずかしいので言わないけど。