ロアルとの話も終わって執務室を出たルゼルは真っ直ぐレリアの部屋に向かった。
今日はちょっと楽しく過ごす、というのは無理かもしれないと思って部屋に入る。
が、部屋に入ったルゼルはそこで目をパチクリさせてしまった。
何せ、部屋の中一面、薔薇、薔薇、薔薇の光景。そりゃあ驚く。
茫然と瞬きを繰り返していると、女中たちがキャッキャと騒ぎながら入ってきた。
「まぁ、殿下!丁度良いところにいらっしゃいました!」
「は?」
当然ルゼルには何が起きているのか全く分からない。いつもは質素にまとめられている部屋がいきなり薔薇で埋め尽くされれば当然である。
「え、何が起こってるわけ?」
「今日はレーア様と薔薇の収穫でしたの!レーア様と私たちで一生懸命育てた薔薇ですのよ」
「もう本当、レーア様ったら健気でいらっしゃいますわ。わたくしどもが何故薔薇を育てるのか、と尋ねたときのお言葉と言ったら……!」
「本当ですわね!」
入ってきたと思ったらいきなり目の前で指を組み、ウットリとした表情で語る彼女らを見るルゼルの頭の中も外もクエスチョンマークだらけである。
「なんて言ったの?」
「それは……」
「皆さん」
聞きなれた声が聞こえてきて、全員一斉にそちらを見る。ドレス姿のレリアが腕の中に零れんばかりの色とりどりの薔薇を抱え込み、微笑んでいた。
ルゼルを見つけて笑みを濃くする。
「クー、来てたなら外に声をかけてくれれば良かったのに」
「今来たばっかだよ。それより、重たくない?持つよ」
「ありがとう」
相変わらず仲の良い二人に女中たちは顔を見合わせて微笑んだ。
「お二人とも、今お茶の用意をいたしますからお座り下さい」
「そうね、まだ薔薇も半分くらい残っているから」
レリアの言葉にルゼルは引き攣った顔で部屋を見回した。
これでまだ半分だと?こんなに大量の薔薇を育てて、彼女は一体何をやりたいのだろう。
そんなふうに思っていると、ルゼルの腕にレリアが腕を絡ませてきた。
顔にははにかみ笑い。