私は人も寄付かない深い深い森の奥で育った。

黒い髪に銀色の目。それはまさにこの世で疎まれる闇の女神メレイシアそのものだった。


闇の女神メレイシアは光の神ロアルと反対の立場に立つ、負のもの全てを司る神だ。


そしてレリアはその女神メレイシアの森の外にある小さな街で生まれた。

その街ではやっぱり女神は恐ろしい神で、彼女の気を沈めるために供物とする女の子を五十年に一人、捧げていた。
女神は五十年に一度、与えられた供物に乗り移って若い姿を保とうとしていると考えられていたのだ。


丁度その年になった時、レリアは五歳だった。そして選ばれた。
どうしてレリアがその供物に選ばれたのか。
それは他の子供とたった一つだけの違い。



――親がいないことだけ



レリアには親がいない。捨てられた子供だったから。だから誰も悲しまないだろうと、レリアが選ばれた。


森の前まで来てくれた大人たちも、いざ森に入るとなると無理らしく、一人で行けと背中を押された。


振り返った時、大人たちはただ哀れむような顔で見てきていただけだった。




一人だけという現実は、怖くて恐ろしくて。震えるだけで動くことも何も出来ない。

暗く光も差し込まない森の中、ただ不気味に風が木の葉を揺らす音しかしない。














コワイ…










サムイ……










オソロシイ………










助けて……





誰か…










誰か………















助けて―――――!!















ただ子供心にそれだけを願った。

溢れる涙はどれだけ拭っても止まらなくて。
怖くて恐ろしくて、何をすることも出来なかった。