次の日、自分の執務室にいたルゼルはため息満載だった。
そんな主を見てトファダは嫌そうな顔をする。

「仕事も終わって暇だから部屋の整理しようとしたのに、今頃はまだレーア様と甘々の時間を過ごしているはずのあなたが何故いるんです?」


嫌味連発のトファダを見上げたルゼルの顔は、何とも情けなかった。

「…そういう顔しないで下さい。今凄いヤバい顔してますよ」

「そんなに?」

「はい。ヤバいですよ。見せたらレーア様も幻滅しそうな顔ですね」

「レーアねぇ……」

ボソッと呟いたルゼルは顔を歪めると机に突っ伏した。


「女ってさ、怒らせない方が良いよね…」

「何を言っているんです。レーア様を怒らせて悩んでいたんですか?」

また面倒臭いと言わんばかりの顔をしたトファダは積み重ねられた資料の本を持ち上げた。

「好きなだけ悩んでいれば良いじゃないですか。私はやることがあるんです。どっかの誰かと違って」

嫌味を言い、部屋からトファダが出て行くのを見たルゼルはため息をついた。

「ねぇ、ロアル」

『気付いてたんだ。さすがだね、クー』


声の聞こえてきたほうを見れば、ソファの肘掛けに体重を預けているロアルがいた。
ふんわりとした印象を受ける金色の瞳を向けてくる。

『お前の願いを叶えたら俺が嫌われてしまった。いまだ会ってもらえないし…、どうしてくれるんだい?』

「僕の知ったことじゃない。それより、我が儘を聞いてくれない?」

『……叶えられることならね』

ため息をついたロアルをルゼルは睨み付けた。

「ロアルに叶えられないことがあるなら、聞いてみたいよ」

憎まれ口を叩くルゼルにロアルは薄く笑みを浮かべる。その顔は何を考えているとも知れない。