ソファから顔を上げたレリアは向かい側に座っているルゼルを睨んだ。
「やりたいことあったのに……」
「僕はレーアといられればそれで良いもん」
「私はやりたかったの!」
起き上がったレリアは拗ねてそっぽを向く。
ルゼルは苦笑すると立ち上がり、ソファの後ろから抱き締めた。
「じゃあ明日やろう?付き合うから」
「当たり前だわ!もしその言葉違えたら、もう夜は来なくて良いから」
本気で睨むレリアの言葉にルゼルの動きが一瞬固まった。
「……本気?」
「嘘で言っていると思うなら、明日ほっぽりだしても良いのよ?」
ふっと笑うその顔を間近で見たルゼルはぶんぶん首を振った。
「来ます!絶対に何がなんでも!」
「あらそう。クーは良い子だから私との約束破るなんてことしないわよね?」
レリアはにっこりと笑う。ルゼルは真っ青な顔をして頷いた。
「もちろん…」
ルゼルはレリアに逆らえない。もしも逆らったらそれから相手してもらえないと知っているから。
レリアは怒るととことん無視を決め込み、たとえご機嫌取りで何をしようとも大抵のことでは許さないくらい揺るぎがないのだ。
「レーアぁ……」
「明日ちゃんと来てくれたら許すわ」
「来るよ、絶対。僕レーアとの約束破ったことないだろ?」
顎に手を添わせ顔を上に向かせて心配そうに除き込んできた彼に、レリアはふふ…、と笑って唇に人さし指をあてた。
「明日行動で示してちょうだい」
「……愛の大きさだったら今からでも示してあげるよ?」
「誰もそんなこと言っていないでしょう。今日はもう相手してあげない」
「え…っ!?」
顔から血の気を引かせて真っ青になったルゼルを見ないレリアは立ち上がった。
そして振り返って微笑んだ。
「明日約束守ってね、王子様」
「はい…」
頷くしか出来ないルゼルに、笑みを残してレリアは隣りの部屋に行ってしまった。
一人残されたルゼルは大変なことになったと、一人後悔するのだった。