後ろから髪をよけられ、首筋に唇が這う。そのくすぐったさにレリアは笑った。

「もう……ダメ」

「だってレーア可愛いんだもん……僕、今すごい幸せ」

「ふふ…好きよ、クー」

腰に回った腕に手を添わせた。乱れた服を直そうともしないレリアの首筋をルゼルの唇が滑る。
こうやって甘えるから直さないのだが。


「ねぇ、レーア?」

「なぁに?」

幸せな気分に浸っているレリアは緩慢と首を巡らす。自分の顔のすぐ横にある綺麗な顔がフワッと微笑んだ。

「レーアは僕のこと好き?」

「ふふ…そんな当たり前のことを聞かないで」

レリアにとって彼を好きでいない時などなくて。好きと言う言葉以上に好きだ。

「じゃあ愛してる?」

「………」


レリアは黙り込んだ。

それは、きっと言ってはいけない言葉だ。それは彼だって知っている。でも彼は相手がレリアだと我慢すると言うことをしない。だから甘える時はとことん甘える。

「……それは言えない言葉だわ。分かって、クー」

「………」

ルゼルの眉が曇る。

「今だけで良いから。嘘でも良いから言って?」

「嘘であなたは満足するの?」

尋ねると彼は黙り込んだ。

きっと彼は嘘を言って満足などしない。レリアに対してはまるで妥協しないのだから。愛情だって、妥協などしない。

「クー…私はあなたが好きよ?でもやっぱりやって良いことといけないことの境界線があるの」

私は約束を破ったと言われてせっかく用意されていた残りの一年を無駄にしたくはないのだ。

だからそれは言いたくても言ってはいけない言葉だ。



「でもね…」

ルゼルはレリアの髪に顔を埋めた。それは既に慣れているからあまり動じたりはしない。

「あと、一年しか愛を囁く時間はないんだ…」

「………」

レリアはハッと息を呑んだ。