「お昼寝しますか?」

「うん……。僕が寝てる間にどっか行ったりしないでね…」

「はいはい」


相変わらずレリアがいないと心配で眠りが浅いのだろうか、すぐに夢の世界に旅立ってしまった。

その顔は幸せそうだ。

「クー……私の、私だけの王子様」

愛しくて。
一緒にいられることが嬉しくて。
こうして存在出来ていることに幸せを覚える。

こういう時は、自分を捨てた親にも感謝出来る。
私を産んでくれてありがとう、と。
私を捨ててくれて、ありがとう、と。



「私は幸せね……」

こうして好きな人の傍にいることが出来るのだから。


「愛してるわ…」

サラサラの髪を撫ぜ、寝ている彼の頬に口を寄せる。



愛してる。
愛しているから。





離れなければいけない。





この想いを断ち切って帰れるようにしないといけないから。

(お母様…)

私の大事なこの人と私を会わせたのはロアルだけど、この人の元へ行くことを許したあなたは……何を教えたかったのだろう。
私には分からない。

(分からないわ、お母様……)

この温かい想いを凍らせる術を。狂おしい気持ちを封じる術を。

(教えて下さい……)


私には分からない。分からないから、教えて欲しい。


「教えて…クー……」

どうして良いのか分からないから。

レリアの頬から流れた涙がぽつり、ぽつりと落ちる。





「何を……?」


垂れた涙が落ちてきたから起きたのだろう。
ルゼルが手を伸ばしてきたかと思うと、頬に伝う涙を拭う。

「何を悩んでるか知らないけど……それは僕に言えないこと?」

見つめてくる青い瞳が視線を捕らえて離してくれない。

いつも子供っぽいのに、こういう時だけ大人びるのは卑怯だと思う。