キレイなキレイなレリア……汚れてしまわないようにと、あんなに大事にしてきたのだから。
汚すことなんて、許さない。
強い瞳で睨んでくるツェーナを、ルゼルは苦笑しながら見やる。
「それは、僕に責任を取れと言っているの?」
もう二年も前からやっていたこと。それに対して今さら何を、と青い瞳が問う。
何も言わない女神を見たルゼルは、トファダを呼んだ。部屋の外に控えていた若き護衛官殿は静かに入ってくると三人に近付いた。
「恐れながら、視界に映ることをお許し下さい」
ツェーナの前で跪き、そっと頭(こうべ)を垂れる。
その人をツェーナは冷めた目で見下ろしているが、何も言わない。
それに構わず、トファダは立ち上がると国王を肩に抱え、小さく失礼しました、と言って部屋を出ていった。
扉が閉じる音がしたのを確認し、ルゼルはツェーナを見る。
「……………」
盛大なため息をついたツェーナは、やれやれと言った体(てい)で人の目には見えぬ空気の椅子から立ち上がった。
「神様を邪魔者扱いしたお礼は、いつか返すからね」
ふん、と顔を逸らし、ツェーナは消えた。
邪見に扱われたのがそんなに気に食わなかったのか……結構子供っぽい一面を持つ女神は消えてしまった。
「おばかさん……ツェーナは執念深いのよ」
「何を返されるか楽しみだね……」
楽しげに笑ったルゼルは、窓際の椅子に座るレリアの近くまでくると、抱き締めた。
「二人の時間は邪魔させない…。たとえメレイシアでも」
「………」
もし奪われるそうになったら、その魔手からレリアを守るのが、ルゼルの役目だ。
「僕たちにはあと一年しかないんだ…」
その長く短い限られた時間の中でしか愛し合えないのに。
「あなたは頭は良いのに、おバカね……」
クスリと笑い、レリアはその人の唇に口付けた。