いつか人ではないモノになる彼を。離れなくてはいけない未来を待つ彼を。
どうして愛するのか、と。
それはもしかしたら自分への問い掛けだったかもしれない。
答えを見出せないそれを、彼女に期待したのかもしれない。
愛し合ってはいけない。そのしがらみを知りながら、愛し合う二人。その叶わぬ恋へのちゃんとした理由を、彼女に求めたのかもしれない。
少し考える素振りをしたあと、彼女は弱々しく笑った。
「…一目惚れなんです」
頬を赤く染めて話す彼女の、身近な言葉にレリアは微かに息を呑んだ。
「一目惚れ……」
それはルゼルが私に対して初めて抱いた感情。
彼女が一番愛する人が私に囁く、いけない愛の言葉。
私と同じモノになる彼なのに、人の世界で私と彼は認められず、彼女と認められる。でも結果的に彼女とも認められない。
それでもどっちにしろ、彼と結ばれる女性(ひと)は、光神ロアルと同じ光に属する人なのだ。
きっとロアルとメレイシアが対極に立つ者という認識がなくならない限り、私たちは結ばれることがない。
考えに浸っているレリアに気付かないセヘネはとつとつと恋心を語っていくが、当然のようにレリアは聞いていない。
そんなレリアに気付いたトファダが肩を叩いた。レリアはハッとする。
トファダに小さく、ありがとう、と呟いてセヘネを見るけれど、話など耳の中には入ってこない。ただ小さく返す相槌だけが、彼女の話を進めていく。
認められない恋なんて。
しないつもりだったのに。
(お母様はきっと、私の未熟さを知っていた……)
だから、下界へ出した。人の世界へと。
このままメレイシアと共に永久を生きることを望んでも世界の掟が私たちを阻む。
逆にもし私が人として生きる道を選んでも、身分違いで彼と一緒になることは出来ない。
どっちにしろ、八方塞だ。
私は選べない。選べないから。
メレイシアは、現実を知れる場所を、用意した。