「嬉しいこと言ってくれるね」
「何があなたにとって嬉しい言葉かくらい、分かっているわよ」
淡い笑みを浮かべるレリアの唇を、ルゼルはそっとさらう。
はにかみ笑いを浮かべたレリアの顔を見た彼は、ベッドから下りる。
「行くの?」
「仕方ないだろ。僕だって一日中レーアと一緒にいられる日が欲しいよ」
盛大な溜め息をつく彼は服を着終わるとベッドの端に座り、レリアの頬に触れてきた。
「お昼過ぎたら、迎えにくるから。着替えておいて」
「はいはい」
レリアが頷くと、心配そうな目で見られる。レリアは腕を伸ばして首に抱きついた。
「大丈夫。大丈夫だから」
「……ん」
レリアの手を離し、立ち上がったルゼルは触れるだけのキスをして部屋から出て行く。扉が閉まるのを見たレリアは、そのまま後ろに倒れた。
深い溜め息をつく。
「十九歳か……」
あと、一年しかいられない。
短い。一年なんて短い。四年があっという間に過ぎたのに、一年なんてもっと早く過ぎてしまう。
五年なんて、短すぎる。
目に浮いた涙を止める術がなくて、枕に顔を埋める。
ここにクーがいなくて良かった。彼はきっと心配するから。涙など、見せてはいけない。
すうっと入り込んできた太陽の光を見て、レリアは顔をあげる。
薄れていく黒。陽の光の当たったところから、金色に戻っていく。
レリアは手を伸ばした。髪に触れ、陽の光の当たる場所へのせる。でも太陽は、メレイシアの闇を振り払っても私を消してはくれない。
身体を起こし、そっと手を伸ばす。太陽に触れればきっと私も消える。だからその温かさで、私を消してしまって。
でも、消えない。消えることなどありえない。そんな容易くは、消えない。
レリアの頬を雫が伝う。
「消してよ……」
彼への思いごと。
私を、消してしまって--。