暗い部屋の中、ルゼルはため息をついた。
やってしまった……。
隣りで眠るレリアの顔を見て、後悔の念にさいなまれているルゼルだった。
怒りが重なるとどうしてもやらかしてしまう。
レリアは許しているようだが、それでも罪悪感は残るのだ。
「君はいつか僕を嫌うのかな……」
「あなたが愛してくれなくなったらね」
暗闇で開く、妖しい銀の瞳。
ルゼルはその細い腰を引き寄せる。
「僕が君を嫌うことなんかないよ。別れることがあれば、君の心が離れていくときだ」
「……あなたのほうが、私のこと愛していないんじゃない?」
軽く息をついて起き上がるレリアの目が冷たく光っている。
「…どういう意味?」
「私、あなたが愛してくれているって知っているわ。だから愛してるし、信じてる。でも、あなたは私を信じてはいないでしょう?」
「そんなこと……」
「ないって言える?あなたは、私の簡単な言葉ですぐに疑うわ。愛してもらえないことが怖くて、あなたは私に甘えてくるけれど、ここで私はあなたしか信じる人がいないの。愛してくれる人さえあなただけだわ。私みたいに何も知らないところへ来て、知らない人と会って、その不安をあなたは知らないのよ。頼れるのはあなただけなの。だからお願い。私を愛して…信じて……」
言われる切ない言葉。その声は震えていて、瞳も揺れているのが分かる。
ルゼルはレリアを抱き寄せた。
「ごめん……僕って、ほんとバカ」
彼女がこんなに不安がっていたのに、甘えてばかりで。気付いてもあげられない。好きな女のことなのに、愚か過ぎて笑えてくる。
ここで一番大変なのは彼女。毎日不安に押し潰されないように懸命になって。その必死さにも自分は気付かなかった。
否、彼女が気付かせないようにしていたのだ。自分に心配をかけまいと。
その健気さが伝わってきて、その彼女を信じ切れていない自分が情けなく思える。