寒い中抱き締めてくれるあなたの腕。
私の身体を壊れ物を扱うように抱くその手が愛しい。
「レーア……」
耳に優しいその声が夢うつつの中でまどろんでいた意識を呼び戻す。
見れば目の前には、澄んだ青い瞳。
「なぁに?」
「僕、そろそろ帰る」
惜しげな声が耳元で聞こえる。
身体を起こすと、後ろから抱き締められた。
相手が自分の長い黒髪に顔を埋める。
「落ち着く……。僕レーアといる時が一番好き」
「甘えんぼさん。もう行かないと朝日が登ってしまいますよ」
「分かってるよ……」
分かっているなら早く行けば良いのに、と思いながら、心はこの人の腕が離れて行くことを嫌がる。
もう大の大人であり、一国の王子であるこの人がこんなに甘えたがりなのは多分、私しか知らない。
「王子」
「レーアは細くって怖いなぁ。思いっきり抱き締めたら折れそう」
「だったらもう少しふくよかな方に相手をしていただいたらいかが?」
クスクスと笑いながら言うと、王子は不機嫌な顔をした。
「僕冗談キライ…」
「はいはい」
柔らかな金髪を撫でると、その目が眠たげに半分伏せられる。
「レーア…?」
「はい?」
「……呼んでみただけ」
なにそれ、と薄く微笑むと、王子がベッドから下りた。