--陽が、沈む。


それを見たレリアの瞳がすうっと色を失っていく。髪は少しずつ影を集め始めた。

たとえ光でも、人工的なものと自然的なものではまるで違う。レリアの変色は、自然的な光が失われる--つまりは、陽が沈むことによってしか変わらない。
また、反対に陽が昇ることによってしか、金にはならない。

周りが明るくても、それが人工的な光ならば、それはレリアの変色を止められない。


「……真っ黒」

呟きに自分の髪を見れば、先程までふわふわ揺れていた髪は真っ直ぐな黒になっている。きっと瞳は銀色になっていることだろう。


「女神メレイシアは僕を認めてはくれないのかな…」

悲しげに呟かれた言葉に、レリアは何も返さない。


好きにはならないと言ったのは自分で。
それを知っているから、彼女はレリアの髪を変えた。必ず帰って来ると知っているから。そしてそれを、レリアは違(たが)えるつもりはない。

そのことを彼に言うつもりもない。彼はきっと、悲しげな顔をするだけだから。



「クー……?」

「なに?」

いとおしげに髪に触れてくる彼の手が温かい。きっとレリアをメレイシアの娘と知っていて愛してくれるのは、この人だけだろう。


「愛してるわ……」

急に言われてびっくりしたのだろう、彼は少し目を見開き、そして笑った。

「僕のほうが愛してるよ、レーア」


そっと合わさる唇。
互いの存在が消えないように、と。
深く深く刻み込むかのような二人のこの行為を。


メレイシアが、知らないわけがない--。