日が沈む。あと少しで私がメレイシアの眷属になる時間が来る。
外をぼうっと見つめながら考えていると、開かれる扉。

「レーア!」

ぎゅうっと後ろから抱きつかれる。振り向かずとも誰かは分かる。

「お帰りなさい、甘えんぼさん」

「ただいま」


振り返れば笑みに細められた青い瞳と出会う。

この国の末の王子であり、レリアを王宮へとメレイシアに直談判に来た人であり、ロアルの供物へと捧げられた人であり。


私の大切な人--。



「もうお仕事は終わりですか」

「今日はね。レーア、お帰りなさいのキス」

じーっと見つめて待っている彼にレリアはくすっと笑った。

「そんな恥ずかしいことはしません」

「どうして?朝はしてくれたのに。やっぱ僕のこと……嫌い?」


心配げに問うてくる態度はとても可愛らしい。
私にしか見せない、彼の態度の一つ。

仕方ないからそうっと唇を寄せると、そっと首の後ろに手が回ってくる。侵入してきて咥内で動く舌に、息を吸うことすら忘れる。

「んっ…、ふ…ぁっ、ちょっ……」


些細な抵抗をしてみても、彼は離れない。
漸く離れたときには、既に抵抗する気力も残ってはいなかった。

荒い呼吸をするレリアを抱き締めたルゼルは、楽しげに笑っている。


「もうすぐだね……レーア」

レリアはそっと視線を窓の外へ巡らせた。