「僕がどんなに嬉しかったか、君には分からないだろうね」


九年もした片想いが実ったことの嬉しさも。付き合っていても自分に彼女の想いが向いているか心配する心情も。


「この二年、心配ばっかりだった。レーアを取られるんじゃないかって。僕が一番恐れていたのはそれ」


自分の手の中にいるうちは良いけれど、そのうち外に出たいとか言い始めたときが来たらと思うと、それが一番怖かった。



「夢を見るのは、何も女だけじゃないんだよ」


レリアと築く温かな家庭。絶対に叶わないそれを、どれほど切望したことか。



バカみたいでしょ………。




シ…ン、と場が静まり返っている。


言ってしまったのだ。あれほど大事な秘密を。二人だけで共有してきた、知られてはいけなかった秘密を。



「……愚かしい…」


そう口にしたのはやっぱりレリアを抱き締める奴で、ルゼルは自嘲気味たものを口許に浮かべた。



そう。バカみたいだろ?
そんなバカみたいな僕たちは、それほど頑なに秘密を守ってきたんだよ。

互いを欲するあまり、少し考えれば分かることを見逃していたみたいだ。



「愚かな……そんな馬鹿者に我らの姫を渡せるものですか」


氷解のような鋭い視線を向けてきたユヒスはレリアを抱え上げる。

そしてルゼルに背を向けた。



「光と闇は、決して相容れることはありません」

「……どうだろうね」



呟いたルゼルを一瞥した彼は、次の瞬間にはその場にはいなかった。
周りがざわついて囁きを交わし始める。



そんな中、ルゼルは静かに目を伏せた。

「ロアル……」



もう良いだろう?

お前の言っていた秘密を、そろそろ聞かせてくれても。

















『そうだね……』