「この美しさが世界のメレイシアと、そこの王子を魅了して止まないのです。それほどまでにレーア様は美しい」


美しいでしょう、と誰に聞いたのか分からない問いにセヘネが泣きそうな顔をして見てきたのが分かった。
でも彼女の方は一切見ない。



「レーアが綺麗なのは当たり前だろ」


レリアはルゼルの傍にいるために自分を磨いていたから。
そんなことしなくて良いって言ったルゼルに対して、

『あなたに釣り合う人でありたいの』


そう言って微笑んでいたから。



「ほう……何故です?」


意地悪く口の端を上げるヤツは、もうひねくれているとしか言えない。
とことんレリアとルゼルの秘密をバラしたいらしい。


……それなら、応えてやるまで。


「レーアは僕の恋人だったから」




















会場がまるで、皹でも入ったかのように凍りついた。

言ってはいけなかった言葉。それはレリアがルゼルのためを思って隠した言葉。
ルゼルのやっと取り戻した場所を失わないために。



「あなたにはセヘネ様がおられますね?それなのに何故レーア様なのです?」

「……何故もなにも、先に会ったのはレーアだし、僕が惚れたのもレーアだっただけだ」



もしレリアに会うより先にセヘネと会っていてセヘネを選んだか、と言われたらそれもないと思うけれど。
どっちにしろルゼルが好きになるのはレリアだっただろうし、愛していたのもレリアだったはず。



「人にはない美しさに惑わされただけなのでは?」

「……そうかもね」


でもレリアに惚れるのは時間の問題だったと思う。外見ではなく、内面の美しさに魅せられて。



「でも、知ってた?僕ね、レーアに一目惚れだったから七年……いや、九年片想いだったんだよ?」


最初に見て魅了されてから七年、城に連れてきて片想い二年してやっと届いた想い。