「君しか要らない。君が他の男のモノになるなんて許せない」

「うん」

「僕だけ………愛してよ」



切ない願いに涙が出そうになる。それを堪えて腕に力を込めた。


視線が出会う。互いに引き寄せられるように口付けを交わし、貪るように続ける。
激しく舌を絡め合い、息すらする間も惜しいと互いの体温を求めた。



やっと離れた口から銀色の糸が引く。
ルゼルは前のように甘えて髪に顔を埋めてきた。


「レ…ア……」

「眠いなら寝ても良いのよ?一緒にいてあげる」

「絶対?」

「絶対」


そう答えると安心したようにルゼルは体から力を抜いた。すぐ意識を手放した彼の頭を、自分の膝の上におく。

サラサラの金髪を撫でながら、心の中が満たされていくのが分かった。


「クー……愛してるわ」


もう、愛しくて仕方がない。離れて分かった彼の大切さ。やっぱり私には彼が必要不可欠なのだろう。


「ねぇ、この子があなたの子供だって知ったらあなたどうするのかしらね」


嫌な顔はされないと思う。返って喜ばれそうな気がする。

「私、嬉しいのよ?」


あなたの子供を身籠れて。だって一番好きになった人の子供だもの。


「私だって……あなたしか要らない」


愛してる。ずっと、永遠に。


浮かぶ涙をそのままに、寝ている彼の唇にキスを落とす。



そっと自分の膝の上からルゼルの頭を退かす。乱れた服を手早く直し、鏡を見て口紅を塗る。さすがに取れたままだと危ないから。



そのまま何食わぬ顔をしてホールに行ったレリアの前に泣きそうな顔をしたセヘネが来た。

「殿下がまだ帰っていらっしゃらないのですけれども……殿下は何処に?」

「さぁ?私は五分くらい話しただけでしたから。その後のことは分かりませんの」


嘘を並べるレリアを疑わず、眉を下げる彼女に微笑みを返してその場を離れる。

窓の外を見ると、そろそろ日が暮れそうだった。



……今日が最後。
私が人間でいられるのも。ルゼルを愛していられるのも、全て。
明日から私は人間じゃなくなる。