首筋に這った唇に体が硬直した。愛のあった行為が、今はない。





……いや、ある。愛はある。

だってそのすべての行為が優しくて。荒々しくされると思ったら、それは全て壊れ物に触るかのように触れてきた。


体に触れられている間、涙が止まらなかった。いけないことなのに彼の熱を求めた自分。息を見出しながら熱っぽい目で見てくる青い瞳、熱いその手に。









私は、逃げることが出来ない……














ソファに横たわりグッタリとしているレリアのすぐ近くで、もう用はないとばかりに服の乱れを直す彼に目頭が熱くなる。

それを抑え込み、頭だけ動かして彼を見た。


「クー……」


呼ぶと見てくれるのは彼に染み付いた咄嗟の癖。
それをやってから「しまった」って顔をする彼に、きっと彼の心の中にはまだ私がいる。


それにホッとしながら微笑みを浮かべた。



「いらっしゃい……クー」

「………」


無言で私を見ていたルゼルは、疑うような目を向けてくる。でもその目がさっきより優しくなったのが分かる。


「ほら、早く」

「………」


黙ったまま悩んでいた風情のルゼルは、でもゆっくりと近づいてきた。

椅子に座ったレリアの前に来たルゼルはなにもしない。そんな彼の手を掴んで隣に座らせた後、首に腕を回した。


いきなり抱き付いてきたレリアに驚いた気配が伝わってくる。それを無視し、彼の首に顔を埋めた。


「今だけ……昔に戻って」


そう呟いたレリアの腰に、腕が回る。痛いくらい抱き締めてくるその腕が、匂いが、体温がいとおしい。


「レーア……愛してる」

「うん」