最初、メレイシアは全くこちらを気にしてくれることがなかった。
今ではどうやって接して良いのか分からなかったからなのだが、それでもわずか五歳だったレリアは振り向いてもらおうと頑張っていた。
そうやってすれ違っていた時、メレイシア以外の神々が"メレイシアの娘"に興味を持って会いにきた。
それが神々と仲良くなった理由。
人間に嫌われているメレイシア。でも神々の中で彼女を嫌う者はいなかった。
そしてその中でも一際メレイシアを気遣い、レリアに優しくしてくれたのは光の神ロアル。金髪金目の優しげな面持ちの男の神。
メレイシアの、大事な大事な人……
メレイシアが何故レリアの髪と瞳を好くのか。
それは愛しい人と同じ色だから。レリアに、表では認められぬ恋人の面影を探しているからだ。
『愛しているよ……愛しいメレイシア。君だけを……』
切なげな声。細いメレイシアの身体を抱き締めるその綺麗な人が、実は私の初恋。
でも届かない恋だからすぐに諦めはついた。
それに私はきっと『メレイシアを愛した彼』を好きになったから。
そして彼の存在が、近くにいて遠かった二人を近付けた。それによって、今の二人は傍目から見ても仲の良い親子のようになれたのだ。
「可哀相なお母様……」
認められない恋なんて。
そんな辛い恋をしてまで彼を愛するのは、何故だろう。
「…戻ろう」
もうそろそろ身体が震えてきた。
近くに置いておいたマントを頭からかぶる。そして駆け出そうとした時、積もった雪に脚を取られた。
「いったぁ……」
涙目になって身体を起こす。黒いマントは雪に塗れて白くなっていた。
「もう…」
仕方なしに雪をはたき落とす。
その時、急に後ろから馬の声が聞こえてきた。
ハッとして恐る恐る振り向くと、そこにはたくさんの人と馬が並んでいた。