誰にも恵まれてなんかいない。
寵愛されて大事にしてきたのは、勝手にそっちがしたこと。
私が望んだ訳じゃない。

『でもメレイシアの娘になると承諾したのは君だ』

「………」


心を読める神様に、レリアは苦笑した。

「大丈夫。この子の父親が誰かなんて分からないわ。だってクーだって知らないんだもの」

『………』


今度はロアルが黙り込んだ。
ミースは口を挟める雰囲気でないと分かっているのか、それともただ単にロアルが嫌なだけか、空気に撤している。


『クーが女遊びをし始めたのが君のせいだろうとは思っていたけど……』

何をしたの?と聞かれてレリアはまた苦笑した。


「勘違いをさせただけ」

『勘違い?』

「そう。この子供の父親が自分ではないと思い込ませたの」


だって、そっちのほうがボロが出ないでしょう?
敵を欺くにはまず味方から、だ。


そう言うとロアルは呆気にとられた後、盛大なため息をついた。


『僕の大事なクーを苛めないで欲しいな』

「クーは私のコトになると素直になりすぎるから」

メレイシアを騙せるとは思ってない。彼女はロアルと並ぶ世界の最強神だから。

でも他の鬱陶しい人たちを黙らせるにはこっちのほうが断然いい道だ。
煩く言われるのは御免こうむりたい。


『だからってレーア、君ねぇ』

ロアルの言いたいことは分かる。
でも今回は悠長には構えてられない。
神の信頼にか関わる出来事なのだから。
それほどレリアがルゼルとの子供を作ることは大問題だ。