あなたを手離すためにやったことなのに、あなたがいないだけでこんなに日常が空しいなんて。
「後悔先に立たず……」
「は?」
思わず口から出てしまった言葉にミースが目をしばたたく。
女中の格好しながら目が猫目なのは、気が緩んでいるからか。
「寒いなぁと思って」
「寒い……ですか?」
確かに季節的に肌寒くなってきた。だからミースは窓が開いてるから寒いと思ったらしく、窓を閉める。
違うの。そうじゃないの。
いつもあった温もりがなくて……寒い。私を抱き締めてくれる腕はないから。
私から手離したと言うのに。
あなたがおかしくなったのは私のせいだって分かってる。
でもどうしていきなり女遊びを始めたか分からない。あの人はそこまで女に興味はなかったはず。
むしろ私以外の女を毛嫌いしていた。
はぁ、とため息をついて私は下腹部に触れる。愛しいものを触る手つきで。
それを見ていたミースの眉間にシワが寄った。
あの人の……、クーの子ども。奇跡的に出来た愛の結晶。
あんなに無理だと言われたのに。なんのイタズラか。
それとも神様にも予想外なのかしら?
うっすらと笑みを浮かべたレリアの視界に顔をしかめたミースが入る。
レリアは顔を上げた。
「なに?」
「産むのですか?やっぱり……。そんなモノ」
歓迎されないのは分かってる。
だって闇の一族はみんな光の一族が嫌いだから。
一緒にいることにすらいい顔をしなかったのに、子どもが出来たなどと言ったら、産みたいなどと言ったら、嫌な顔をされるのは仕方ない。