レリアはメレイシアと過ごす日々が好きだった。年の流れは分からないが、それは人の世界から外れた私には関係のなかったこと。
長くなった金髪は美しく、メレイシアとはまるで違う美しさを持ち始めていた。
人の世界で正反対とされているメレイシアとロアル。そのせいで敵のようにされていた二人だが、でもロアルと同じ色合いのレリアを見ても彼女は変な顔をしない。反対に、常に愛しそうに見てくる。
ずっとメレイシアを見てきたレリア。だから知っている。メレイシアが自分を見る目が、そこまで優しい理由を。
「お母様」
『どうした、レーア』
もう暗くても怖くない森。一人で出歩いても迷わないここは、メレイシアの森であり、レリアの庭だ。
「私はお母様と同じにしたいの。こんな髪、闇の女神メレイシアの娘じゃないもの」
レリアの髪と瞳は蜜を集めたような金色。だから長い間濡れたような黒い髪に憧れていた。
メレイシアはその人の世のものとは思えぬほどに美しい顔を困惑にゆがめる。
『わがままな娘……私はそのままが好きなのだ。変えてやるつもりはないよ』
メレイシアは一度こうと言ったら絶対に変えない。だからレリアはムウッと頬を膨らました。
「意地悪…」
『意地悪で結構だ。そなたのその髪と瞳はそのままで良い』
わしゃわしゃと髪を乱され、レリアは首を振って逃げる。
彼女が逃げた先は、白い雪に囲まれた閑散とした湖。白い肌が冷たい水によってさらに血の気をなくす。
『そう自分を苛めるでない。レーア、出て参れ』
「お母様が意地悪するからよ」
素直に湖から出て行くと、真っ青な脚で雪の降り積もった地面を踏んでいく。
メレイシアは呆れたようなため息をついた。
『……暖をとる必要がありそうだな。私は先に帰る。気がすんだら帰って参れ』
横でフワリと空気が動く。見てもそこにはもうメレイシアがいないと知っているから、振り向いたりはしない。