私の存在があなたを壊すから。何より大切なあなたをその"狂い"から救うために。
私は、あなたから離れたの――。
最後にあの人と会ったのはあの日。その日からは一回も顔を合わせていない。
窓際にある椅子に座っていたレリアは外に向けていた目を細めた。
金色の瞳は外の眩しさを跳ね返している。
「会わなくてよろしいのですか?恋しいのでは?」
そんなレリアに声をかけたのはずっとこの国に滞在しているセヘネの母親についているはずのユヒスで。
耳に届く静かな声にレリアは目を細めた。
「つらいけれど……でも我慢するわ」
あれから一回も会っていないから、ルゼルは執拗に部屋を訪れてくる。
でも会わないようにと部屋の前で追い返してもらっている。
最初の二日は良かった。でも三日以上会わないなんてことが今までなかったから、心配して理由を問いただそうとしてくるようだ。
それでもミースたちはレリアに気を遣って風邪を拗らせたことにしておいてくれている。
それを彼が信じているのかは疑わしいけれど。
「そろそろかしらね……」
窓枠に肘をついて頬杖をついたレリアは呟いた。
「何がです?」
「限界」
「限界?」
「そう。そろそろ鬱憤が溢れ出す頃よ」
毎日毎日ここへ通って溜まった鬱憤を晴らしていた彼が、もう一週間ここには入ることをしていない。
普段から鬱憤を溜めやすい彼がもう一週間それを晴らせずに溜め込んでいるだけ。
そんなことになっていてどうなるか想像出来ないレリアじゃない。
「気を抜いたら、すぐにでも乗り込んでくるでしょうね」