フワリフワリ。
揺れるそれは風に靡いていて、綺麗。
真っ赤な真っ赤な、血の色。
「綺麗ね……あなたの瞳も同じ色だったかしら?」
「そうですよ、我らが姫君」
白い視界を遮り、彼が映る。レリアは微かに微笑んだ。
「あの人と違うのね…」
「私はあんなナリソコナイとは違いますから」
「クーは綺麗よ。だって神様だもの」
「我々が信仰するのはメレイシア様だけです。あんな男など…!」
相変わらずルゼルは嫌いらしい。
クスクス笑いながら青い蒼空(そら)を見上げる。
「みんなはどうしてクーが嫌いなのかしら?」
「あなたを誑かしたからですよ。美しい我らの秘宝…」
ベッドに横たわって天井を見上げていたレリアの金髪を手に取って、ユヒスは指に絡める。
恭しく触ってくるその様子を見て、レリアはこの情景をルゼルが見たら凄い形相をしてユヒスに殴りかかるのだろうな、と想像して笑みを漏らした。
「姫君はあんな男の何処が好きなのですか?私には分かりません」
「そうねぇ…」
考えてみて、すぐにやめた。
何処、なんて断定出来ないくらい彼の全てが好きだ。
多分目の前の彼には分からないだろうけど。
「殺してしまいたいほど、好きよ」
その目に他の女を映さないで。笑いかけないで。触れてしまわないで。
そんな感情がドロドロと胸を覆い尽くすほどに。
「愛してるの…」
独り言のようなそれに髪に絡まっていた指がピタリと止まる。
「……思い過ごしです、姫」
「そうね」
愛してるなんて感情、私たち二人には似合わない。
思い違いも甚だしい。