どんどんレリアの目が据わっていく。
ちょっと眉間にシワが寄って、不機嫌そうなものが伝わってきた。

でもその顔は一瞬でなくなり、その後は満面の笑みを浮かべた。

「……呪い殺して差し上げたいわ」

「………」

「………」


今度黙り込んだのはこっちだった。


少しの間沈黙があったが、ため息をついてレリアの頭を撫でる。

「呪い殺すのは止めて。後でこっちが殺される」


本気で。あの人怖いし。


するとレリアは「ふぅん」とだけ言って黙り込んだ。


「……クーに手を出すならお母様に頼むわ」

その言葉を聞いて、思わず顎が落ちた。
"お母様"が分からないアルスは首を傾げている。


「お願いだからそれはやめて……あの人に僕の女関係で睨まれるのは勘弁」


自分の女関係で文句を言われるのは嫌だ。メレイシアはセヘネの母親より恐ろしいから。

「あの人に睨まれたら石になる」

「メデューサじゃないわよ、お母様は」

「分かってるけど、身体硬直して動かなくなる」

そうなったら同じことなのだ。どっちにしても動けないうちに殺られる。


「お母様をなんだと思ってるの」

呆れたような声を聞いて苦笑する。

ご機嫌とりで手を握ると、握り返してきたから顔に出しているほど怒ってもいないようで安心した。


「お前は、セヘネ嬢と仲良くしてると見せかけて、その人と何処まで行ってるんだ?」

今まで口を挟まなかったアルスは茫然と見てきている。

その顔は驚いていると言うよりも呆れているという感じだ。

「何処って?」

「親とまで会っているなんて、その親御さんは勘違いしないか?」

「勘違い?」

「お前は自分の立場を考えろ。娘が王子と付き合ってるって知って、玉の輿を狙わない親はいないだろ」

「あー……」