レリアから視線を逸らしてこっちを見てきた彼はちょっと呆れ顔だ。

「お前はバカな奴だな。こんな人に心配をかけさせて」

「は?」

心配だと?

何のことか分からないから茫然とレリアを見ると、レリアはちょっと揺れた瞳で見てきた。

「少し……痩せたでしょう?」

言われてやっと意味が分かった。
「あぁ…」と声を漏らす。

「そんな些細なこと心配してたの?」

「些細なことでも心配するの」

怒ったように言われて思わずため息をついてしまった。

それがレリアには気に入らなかったようで、

「ため息吐かないでくれない?」

と睨み付けられた。

それに引きつり笑いで受け流したあと、不意に後ろを振り向いてやった。

するとこちらを見て囁いていた人々がイソイソと動く。

盗み聞きしていた人を追っ払ってから視線を戻した。


「そんな心配するほど痩せてないよ。ご飯の間中嫌味言われてたら、食欲もなくなるって」

意味が分からないらしいレリアは目の前で目をパチクリさせる。

その顔に思わず苦笑してしまった。


本当は食事なんて取らなくても生きていける。でもまだ人間のときにあった生理的欲望は時々現われる。


「ご飯の時さ、セヘネのお母さんが一緒にいるんだ。で、いつも嫌味言われるから」

「嫌味って、どんな?」


心配そうに覗き込んでくる顔は案外近い位置にあって、不意打ちかければキス出来そうな感じ。

でもそれをやって拗ねられると困るから、やらないでおく。

「王子殿下は女心が分からないのねー、とか」

「ええ」

「節操がなくて、こんな方にうちの娘を任せて大丈夫かしらー、とか」

「……ええ」

「うちの娘が大人しくしてるから、フワフワしているのではないかしらー、とか」

「………」