「桃、もう大丈夫だよね?次、あれ行こうよ!なんかすごい人気らしいよ!」


そう言って、彼女が指差した先には、お化け屋敷があった。

彼女は再び彼に腕を絡め、リードする。


私は、それをただ突っ立って眺めていた。

人ごみの中に混じって、ふたりはすごく絵になっていた。


痛いよ、胸が。


すると、空っぽだった右手が何かに覆われた。


「ほら、行こうぜ!あれ?もしかして桃、お化け屋敷も苦手?」


そう言って笑うレンは、私の心に光を灯した。

この人、本当に温かい。


「レンのばかぁ!そんなことないもん!」


私とレンは手を繋いだまま、少し先にいるふたりを追うようにして、お化け屋敷へと向かった。