壊れている山中はよく喋る。

安部はくすくす笑いながら、もくもくと作業しているだけで、山中の話にはもう加わらない。

だいたい、誰が山中にいったんだ。俺は思う。

まあ、佐藤だよな。もしかしら、山中自身の勘かもしれないけれど。

‘ここらへん’じゃ、隠しごとなんていうのはあり得ないことなんだ。

「でも、それでいいんじゃない。メコンのマコイ贈るって決めた相手のためなら」

誰も応じないので、やがて壊れた山中も静かになり、あとはもう三人とも、もくもくと目ぼしい木を袋いっぱいになるまでゲットしまくり終わったとき、ふいに安部がそういった。

「死んでもいいって思えるほど好きな相手なんだから、いいんじゃないかな、追っかけてって、死んじゃっても」

舞いわく、フランス人とかの子供ってああいう顔してるよねえ、の顔の安部は、作業でほんのり赤くなった頬をもっと赤くして、笑った。

「とにかく、そういう相手に会えたってことがなにより素敵だよ、もういっかい、おめでとう」

「あ、ありがとう」

思わず答えたところで、山中が盛大にお腹を鳴らした。

「よおし、じゃあ、前祝いってことで、俺がおごる、隣町のよしの、いこうぜ」

「やったあ」

さすが壊れているだけあって山中の発想は斬新だった。

俺たちはダッシュで山を降り、きこり兼営林官である安部の親父さんの小屋にひとまず集めた木を置いてから、それぞれの自転車にのって、内の橋むかって、さらに力強くダッシュした。