山中が、手ごろな襟巻きの木を手でなでながら、おどけていう。

「できないでしょう。普通」

「やりたがるんじゃん?」

俺はしつこい山中を無視して、立派なミズキ木をがしがし両手で押したりした。

安部が、それはイヨマンテでしょう、とやんわりと制する。

「メコンのマコイ、作るってきいたぞ」

「誰が?」

「会長が、舞ちゃんに」

山中はみょうにハイだ。きっと薬師のものも送ることにしたんで、壊れたに違いない。

「へえ、凄いね、もう決めたんだ。おめでとう」

安部が人のよさそうな微笑みでもって祝福してくれた。

そうだ。

メコンのマコイを作るときめたら、命より大事なメコンがいるということで、そのメコンが受け取ってくれたなら、100パーセント結婚して家庭をつくるということだからだ。

「早くないか? もっといい女は星の数ほどいるぞ」

山中は、柳の枝を安部にさしてから、それに、一年たったら出てくのにさ、と続けた。

俺は、なにもいわない。

ただ、黙って木を探す。

そういえば、親父といっしょにメコンのマコイの木を探しにいこうときめたのに、まだ実現していない。

「一年たっていなくなったら、追っかけてくのか? 死ぬぞ」