「薬師んとこは、金貸し云々とかいわれてるけど、あれでしょう? 和人に売ったんだよね。仲間を」

最初に話だしたのは、山中だった。

山中の家は寺だ。

もともとは佐藤んとこみたいに、トゥ-クを出す家だったときいている。

「それが発端で、‘ここらへん’に居た民族は山の端に追い詰められえチャシで絶えたって話」

みんな、ますます静かになる。

俺は、薬師の申し出を受けるとき、試験のことをちょっと考えたのを後悔しはじめる。

「でも、まあ、イワクラだし。いいんじゃないっすか。そんな硬いこといわなくても」

佐藤だった。

さっきまでいがぐり振って、顰蹙、とかいってた癖に。

俺はまじまじと、いや、みんながまじまじと佐藤をみつめた。

「俺たちの時代として考えるならだ。薬師は、そりゃあ、すこし底意地の悪い、おやじ教師だけど、あいつの授業、とくに日本文学系のは面白いよ。太宰のときなんて、俺、感動した。だからさ、あいつはそう悪い教師じゃない。なら、俺たちの時代で、俺たちの主催なら、つまり、、問題ないんじゃないか」

舞が拍手した。

佐藤がゆっくりとみんなをみまわす。

小森も山中も田口も桜井も、まだ困った顔だったが、とりあえず、うなづいた。

俺はみんなの気持ちが変わらないうちに、ダーッとイワクラの準備事項、スケジュールを確認し、決定した。

「佐藤くんってビジュアルもいいけど、いうこともいいよねえ」

と舞が帰り道でさんざんいうのだけが、辛かったけれど。