薬師に家は、薬師はこの学校で教師を務めることで、なんとか‘ここらへん’に居ることを許されている感があるからだ。

それ以上を望むと、溜まり、に落とされるはずだからだ。

「いやあ、ほら、どうしてもな、おい、それとは捨てられないものばがりでな。いくつかイワクラで送ってもらえんかと思ってな」

無理ならいいだ、いや、無理だな、ははは。薬師は額を汗だくにして懇願している。

俺に乞うている。

それも職員室で。

俺は黙って薬師の黒ずんでいく四角い顔をじっと見つめた。

そうだ。たかがガキの生徒会長でも、イワクラを主催する俺には、許可をだす権限がある。

たとえ大人たちが、首を横にふっても、イワクラで薬師のものを送ってやることができる。

薬師はあえてみんなの目のある職員室で、すべてをきめたかったのだろう。

「どんなものですか?」

今度の試験のこともすこしだけ考えながら、俺はきいた。

「死んだ婚約者からの贈りものなんだ」

薬師は半分泣きそうな顔でいった。

「わかりました。土曜までにはうかがいます」

一瞬、歓声があがったように聞こえたけれど、空耳だった。

職員室の誰もが、あきれたように俺をながめていた。

ああ、わかった。

俺はふりかえる。

窓からいっぱいにユーカラの風が吹き込んできていたから。