無視しながら、舞に、席についたらと促した。

「あれ? 怒った? 会長?」

佐藤はへらへらと近づいてくる。

佐藤の席は俺の隣だ。

「おまえさ、この頃すこし壊れてきてないか」

佐藤は大きなため息をついて、椅子にどっさりと腰をおろした。

「耳切られるわ、はづれたのが家にいるわ、試験だ、それ試合だってやられてみろ、誰だって壊れてくるだろ」

「壊れても、イワクラはちゃんときめようぜ。あれ、大丈夫そうか?」

佐藤はすねたように、ふん、と鼻をならしてから、ほら、と耳の絆創膏をさしてみせた。

「これ外して、ちょっとやってる」

「血?」

俺は小さくうめく。

「だって、生き返ってしな。確実」

佐藤はそういうとすっとそっぽをむいた。

一時間目の国語、狐目の薬師が教室に入ってきた。



「おい、会長」

安田に頼まれて出席簿を届けに職員室によったら、出掛けに薬師に声をかけられた。

俺は、こいつが苦手だ。

生徒の中でこいつが得意なやつはまあいないと思うけれど。

たぶん、‘ここらへん’の連中のほどんどから嫌われている薬師の家。