「あの超地味な顔のライターさん、昨日もうちにきたよ」

次の朝、教室で顔をあわせるなり舞がとんできた。

「なにしにきたの?」

俺は鞄の中からとりあえずの単語帳をとりだしてから、きく。

あんまり、舞に勉強してない奴って思われたくないからだ。

「パパから民族の話とか聞いてた。植物っていてったよね、あの人の専門。でもなんか、そrこそ霊とかそんな感じの質問ばっかしてたよ。もちろん、パパはほとんど答えられなかったけど」

「俺のこととか、親父のこととか聞いてた?」

「なんにも。それも変だなって思ったんだよね」

舞は、制服のブレザーのボタンを指でいじりながら、あの女あんまり好きじゃない、とつぶやく。

俺もだよ、といって手をとり、ぐっとひっぱって抱きしめたくなったけれど、もちろん我慢した。

かわりに、正婆、面白かった、と聞いてみる。

舞は、ぱっと顔を輝かせて、あんなに凄い感じ、生まれて初めてだった! と小さく叫ぶように答えた。

俺はおもわず指を口に押し当てた。

ほかの連中にはあんまり聞かれたない話だ。

舞は、あっといって口を閉じ、ごめん、と小さく頭をさげる。

やばい。また抱きしめたくなる。

「あ、Aの舞ちゃんだ」

佐藤の馬鹿だ。

朝練が終わったらしい。