色のない塊、にゅるにゅると動いている。

「もしかして、オプニカの?」

「そう思うよな、普通」

佐藤は、水路の底にはりついてしまった、それを、またつつく。

にゅううっと、鳥の嘴のような形になった、ような気がした。

「送れてなかったのか?」

「認めたくないけどな」

佐藤は嫌そうに顔をしかめる。

ついさっきからぐっと闇が迫ってきていた。

足元はずいぶんと暗い。

でも、チャシからはぐれて、佐藤んちの水路にはまり込んだ、水の塊は、ほのかに発光している。

ミルクの色だ。

たぶん、弱っている。

「もっと早くいってほしかったよな」

薄暗いなか、いっそうに凹凸のはっきりしている佐藤の掘りの深い醤油顔を、俺は見るともなくみている。

ただ、水路の中の現実だけを見たくないために。

「昨日、気がついたんだよ。親父に畑に水やっとけっていわれてさ。すぐに教えようとは思ったんだけどさ、ほら、事故とかあったし、舞ちゃんとこの、忘れちゃってて」

 悪い。

佐藤はいがぐり頭を潔く下げた。