「なによ」

ぴょんぴょんと軽い足取りでどんどん行く佐藤の後ろを、俺はのろのろついていった。

山の端に寄り添って畑をもっているのは、‘ここらへん’に10近くある農家の中でも佐藤のとこだけだ。

佐藤の家はむかしはトゥークを出す家だった。

正婆もある意味では佐藤の家と縁続きだ。

だからというわけでもないのかもしれないけれど、佐藤んとこの畑にできる野菜には力があるといわれてきた。

有機栽培を早くから始めたというのだって、ここの畑だけ妙に余計な草が生えない、という噂があったらしいし。

佐藤は否定するけれど、いまでも、佐藤んちの人参やジャガイモをいれて作ったカレーを食べると、試験にうまくいくなんて本気でいう連中はたくさんいる。

「カレーのほうがいいかも」

「え? とんかつだぞ、今夜は」

畑のどんづまり、ほとんど山の斜面にはうようにエンドウ豆の蔓がごしゃごしゃと伸びている辺りで佐藤は、つと立ち止まった。

「とんかつでいいんだろう?」

変に念を押す。

「いいよ。で、なにさ?」

「これさ」

佐藤はサンダル履きの脚で、畑と用水桶の間に通してある五センチほどの水路の端を、つっつっとつついた。

なにか、にゅうっとでた。

蛇? いや、色はない。