佐藤と俺は顔をみあわせる。

まだ口に焼きそばを入れたままの佐藤が、いけば、と顎で促して、俺は首をひねりながら、玄関へと向かった。

「ここだと思ったのは、あたりだったな」

農機具や長靴なんかが所狭しとおいてある佐藤んちの玄関先で、親父はマウンテンバイクにまたがったままで、にやりと笑う。

「なにやってんのさ。飯までまだ時間あるじゃんよ」

俺が面倒くさそうにスニーカーをひっかけて出ていくと、いやあ、近くまできたからさ、ちょっと寄ったんだ、と上機嫌だ。

「あがっていってねえ」

佐藤の母さんが台所から顔をだしていう。

ちょっと声が高めだ。

親父が‘ここらへん’では、おばさん連に不動の人気を誇っている証拠だ。

ご飯も食べていくでしょう?もう用意してるからねえ、とすかさず続いたし。

「俺、もう帰るよ」

いやあ、そうかい? なんて喜んでいる親父に冷たく言い放った。

本当は佐藤と邪にたいするこれからの対策と、イワクラのことを打ち合わせておきたかったのだけれど、もうどうでもよくなっていた。

すねたんだ。

だいたい、俺と佐藤で邪に対策立てたって、なにがどうなるってわけじゃない。

まだ母さんの親友の娘が片腕を失くしたのに比べたら、無いに等しい佐藤の傷だし。

ただ、なぜそうことが起きたのかは、知りたいのだけれど。

やっぱり正婆か。